"Women Who Must Recover Years Lost in the Watchtower," by Randall Watters article printed in the Jan/Feb 1994 issue of the Free Minds Journal/http://www.freeminds.org/psych/recover.htm
「愛が世界を動かしているのではない。愛は、この世界を生きる価値のあるものにしている」― フランクリン・P・ジョーンズ。
ものみの塔のようなグループにいた時間が長ければ長いほど、自分のパーソナリティにカルト的な特徴が染み付く可能性が高くなります。カルトの影響で一番よくあるのは、日常生活の道徳的問題について過度に単純化する「白か黒か」という態度です。その他に、光と闇の戦い、神と悪魔の戦い、真理と誤りの戦いを強調することで、攻防戦的なメンタリティ も生まれます。カルトのメンバーには、自分が日々どのような選択をするかを宇宙全体がじっと観察している感覚があるので、神や天使たちを決して失望させてはならないという、ものすごいプレッシャーや罪の意識を感じてしまいます。神や天使たちは、例えばあなたがどんな映画を見るか、どんな服を着るか、だれとつきあうかをじっと監視しているというわけです。ものみの塔はこれらの事柄について正しい選択 をするためのガイドライン を出版しています。これらのガイドラインははっきり規則として表現されることはなくひげを生やすのは賢明なことでしょうか… のような言い方で、このような選択を道徳的な問題に見せかけています。しかし現実には、こういう言い方はエホバの証人が従わなければならない暗黙の規則を表しているわけです。神や組織からの罰に対する恐れが、こういう暗黙の規則に服従させるために使われています。
カルトは家族を分断します。家族の絆への忠誠は、ただそれまでの間、そこそこ許されているだけです。カルトは、どんな犠牲を払ってでも組織に最大限の忠誠をつくさなければならないと強調して、家族をばらばらにします。家族の誰かがタバコを吸ったりポルノを読んだりしたときは、その人が自分から告白して罪を認めない限り、長老に報告しなければなりません。エホバの証人の女性がひそかに中絶したとき、このような情報を公開することがたとえ法律に違反していても長老に報告しなければなりません。地域の会衆のメンバーはさまよえる兄弟について報告すると、上に引きたててもらえる ので(つまり長老の機嫌 をとることができるので)、会衆の中の弱い人は誰かを密告して自分の立場を良くしたいという誘惑を強く感じてしまいます。出世のための卑劣なやり口と言えるでしょう。古いカルト的パーソナリティとして、独善性と、まさにこういう不信と疑惑の態度とをきちんと認識して克服する必要があります。人を信じること、昔の自分と同じように未熟な人に思いやりを示すことを学ぶ必要があります。
カルトには、対等な仲間はほとんどいないと言えます。あなたは、先生か生徒のどちらかでした。両方であることもよくあります。いつも、見上げなければならないようなあなたより強い人がいて、あなたが訓練してあげたり正してあげなければならない、下にいるだれかがいました。対等な仲間というのはほとんどいません。それは、まさに、このような不信と疑惑のせいです。あとになって、悪用される恐れがあるから、親密になりすぎないように、人に自分のことを打ち明けすぎないように、気を遣う必要がありました。カルトでは、人との関係は、教師と生徒の関係か、同僚としてはなるべくうわべのものにしておくのが無難でした。しかし、カルトを離れようとする人にとって、信頼できる新しい友人を得ることは、人生で味わう最もすばらしい経験になります。最初は、新しい友人を信用するのはとてもむずかしいかもしれません。その人が自分を裏切らないこと、自分の感情にその人が無頓着にならないことに、賭けなければなりません。すでに自分の友達である人の友達から始めて、だんだん友情の輪を広げる方がやり易いかもしれません。すでに自分が知っている人が、「この人なら大丈夫」と言う人なら初めてでも心強いと思います。
女性がものみの塔を離れるとき、状況によって家族はいろいろな影響を受けます。ある離婚した女性は2年間組織にいて、当時8歳の子供をものみの塔の中で育てていました。ある日わたしに、もう断絶すると言いましたが、その時車の中にいた息子は、それを聞いて、目を輝かせ、やめて嬉しい理由を、ひとつひとつ、声に出して数え上げはじめました。少なくとも、この女性の家族にとっては、ものみの塔をやめるのはよいニュースだったわけです。やめるということを、人生における幸福で肯定的な出来事として受け取る人はいます。
夫またはパートナーと、宗教や信仰についてよくコミュニケーションがとれている場合には、ふたりで一緒にものみの塔のファウルプレイに気がつくチャンスがあります。カルトは、無知と恐怖で生き長らえます。カルトの手口は対話と文献で明るみに出ます。夫が聞く耳を持っていて、証拠を吟味する気になるなら、組織が神のものでないことに夫が気付く確率は圧倒的に高いでしょう。それが必ずしもものみの塔をやめることにはつながらないかも知れません――特に、夫の家族がエホバの証人で、家族から断絶される場合には。主に家族のために残るのであれば、あなたが断絶したとしても、結婚生活には大した支障にはなりません。組織の中の人たちに働きかけて救出するために、夫と妻の双方が組織に残ることを選ぶ場合もあります。
辞める決意をした女性のみんながみんな、幸運と言うわけではありません。夫がエホバの証人で、ものみの塔の信頼性を揺るがす資料を一切拒否したり、心に疑念を浮かばせるような問題を話し合おうとしない場合、妻は、いらだち、失望します。あなたがこういう状況ならば、エホバの証人以外の頼れる友人を確保してください。自分自身の新しい社会生活を築いてください。教会に行くのが嫌でなければ、夫があなたのそばにいてくれるかどうかに関りなく、あなたが新しい生活を始める力を得られるように、他の人にも祈ってもらいましょう。夫があなたと共にいてくれるだけの愛情があって、あなたに敬意をはらって尊重してくれるなら、少なくとも、この嵐を乗り切るだけの力が、あなたにはあります。夫が、エホバの証人の男性が妻に対して示すおきまりの「丁寧さ」であなたを扱ったり、あなたに冷たくなるなら、痛みや別離が避けられないとはいっても、ともかく、少なくとも自分自身の個別性と自尊の感覚を持って逃げることができます。もし、自分の人生に本当の個別性がなく、自分のアイデンティティが完全に夫に包みこまれてしまっている場合は、ひどい苦痛や、夫への怒りを感じることでしょう。もし、できるなら、できるだけ早いうちに、このような状況に対して備えておいてください。
人間の組織がどういうものか、場合によって不正直やだましがどのようにしのびこむかをあなたが説明すれば、幼い子どもたち(10代前)には集会への参加をやめるのはむずかしいことではないでしょう。裏表紙の記事(訳注:元々はFree Minds Journal誌に掲載されていた)を読んで、子どもたちとこの問題を話し合うときの参考にしてください。
十代以上の子どもたちにとっては、エホバの証人としての生活は異常にきつく、仲間たちの間で自分が反社会的に感じさせられるものです。このため、子どもたちは、多感な時期を生き延びるため、プライドやエリート主義の態度などの自己防衛メカニズムを発達させます。ママは間違っていた、ものみの塔は本当は神の組織ではなかった、ということを伝えようとし始めると、遅かれ早かれ子どもの怒りが表面化します。なぜでしょうか?
今までこの宗教のためにこうむってきたあらゆる拒絶、あざけり、苦痛がすべて無駄になったとわかった時、怒りが生じます。今まで夢見てきたのに実行することを許されなかったことのすべてが、心に浮かんできます。スポーツ、学校でのコンテスト、ダンス、美、チアリーダーなど、これまで夢見ることしか許されなかったこと(自分をごまかしてはいけません、もちろん、子どもたちは、これらのことを夢見ていたのです!)が、今や記憶に浮かんできて、離れません。今までこれらのことを禁じてきたあなたに対する怒りが、あなたに対する反抗や、すべての宗教、特にキリスト教に対する反抗として現れることもあります。こうしてあなたに向けられている怒りにどうやって対処したらよいでしょうか?
なによりもまず、あなたは冷静でいなければなりません。弱さを認め、すわって、自分が失った年月についてのあなた自身の苛立ちを子どもと分かち合ってください。今まで犠牲にしなければならなかったことを書き出して見ましょう。そして、子どもにも同じことをするように勧めましょう。この話し合いで子どもが言おうとすることをよく聞いて、このことについて、子どもの許しを乞いましょう。今まで子どもにこのような弱みを見せたことがなかったのなら、今こそ始めるべき時です。最初は、居心地悪く、きまり悪く感じるかも知れませんが、子どもの怒りを解くのにとても役に立ちますし、結局は子どもともっと近しい関係になれるでしょう。子どもの再出発を助け、促してください。親子ともに立ち直る計画を立ててください。いつから始めるか、ちゃんと決めておきましょう。放っておいてあとから決めよう、などとは思わないで下さい。子どもたちは、あなたの誠実さと、あなたの子どもたちへの愛情、あなたが子どもたちのために最善をつくしていることを示してもらう必要があります。
子どもが怒りを表してあなたに反抗する場合があります。突然ものみの塔の側について、あなたがやめることに反対するかもしれません。あなたに押しつけられた宗教のせいで何年もいろいろな事を犠牲にしなければならなかったために、あなたに対して感じている怒りが、独り善がりな言動や、あなたが「真理」から離れることで罰したいという欲望として表面化する可能性があります。子どもたちにとっては、生まれて初めて形勢逆転して、あなたが「弱い」エホバの証人になり、自分たちの方が突然「霊的に強い」と考えることができるようになるのです。これは、子どもたちにとって、棚ぼたの幸福なので、この際やれるだけのことをやってそれを味わおうとすることが珍しくありません。あなたを罰することで満足感を得たり、生まれて初めて「エホバ」の前で清い良心を保っていると感じたりすることもあるでしょう。実際には、これは、あなたの弱みをつく、一種の楽しいゲームに過ぎません。振り回されないで下さい。これは、あなたの成熟さを試す試練なのです。つまり、弱さや敏感さを示しつつも、その弱みを子どもに手玉にとられてはならないのです。人の弱みを手玉にとることについて子どもと話し合うだけで、たいていは解決できます。たとえ子どもでも、自分が人の弱みを手玉に取る人間だとは思いたくないものなのですから。
夫がエホバの証人に留まろうと離れようと、舅姑がエホバの証人の場合は、問題が起こると予想されます。(よほどこれまでコミュニケーションがうまくいっていたのでない限り!) 舅姑は、あなたの「信仰が弱い」ことや、大事な息子を苦しめて恥をかかせたことに対して、あなたを罰しようとすることがよくあります。あなたを背教者扱いして、絶交しようとすることでしょう。しかし、これもやはり人を手玉に取るやり方なのです。相手になってはいけません。あなた自身が調べた結果に基づいて、理性的にものみの塔を離れる決心をしたことを説明してください。そして、もし見たければすべての証拠書類を持っているのでいつでも見せます、と、言ってください。この宗教を離れることを理由にあなたをどんなに罰しようとしても、自分は神と人との前で清い良心を保っているので無駄だと言ってください。そして、組織をやめても夫(彼らの息子)への愛は変わっていないことも伝えましょう。あなたの本質が弱くはないことを知らせる必要があります。あなたがこれらの問題を充分時間をかけて考えてきたことを知らせる必要があります。もし、あなたにためらいや「霊的弱さ」があるのを感じたら、義理の親たちはこれまであなたに抱いていた敬意を失うでしょう。
1993年9/10月号の『Free Minds Journal』で強調されているように、カルトは、麻薬のように作用することが少なくありません。人生の望ましくないものから逃げて、自尊心の模造品を作り上げる助けになるのです。しかし、このために、自分自身の生得の人格が犠牲になり、なにか恥ずべきもので隠さなければならないものであるかのように、カルト人格の下にうずもれてしまいます。ほとんどのカルトでは、結婚しているカップルではセクシャリティが許容されてはいますが、寝室での特定の行為が禁じられることが多いのです。70年代には、多くのエホバの証人の妻が、オーラルセックス拒否が原因で離婚しました。ティーンエージャーは、一般に、エホバの証人でない相手とデートすることは許されず、多くは、本当に恋に落ちたわけではなくただ性生活を持って家を出るだけのためにエホバの証人同士で結婚しました。私は、これまで会った中で最悪の男性と結婚してしまったJWの女性からの電話を、数多く受けています。兄弟や姉妹と触れ合うのは危険だとか、姦淫につながる恐れとかが強調されるため、エホバの証人の間では、肉体的親密さが特に欠けていることが多いのです。情愛のある夫を見つけた妻もいますが、結局は会衆の長老になって、自然なやさしさやロマンスの味わいを失っていくのを見ているしかありませんでした。「組織人間」が感情的には枯渇していることを思い知らされることになったのです。
前にも述べたように、エホバの証人は、組織外の人とはデートしないように言われていますし、エホバの証人同士のデートも二人っきりにならないように、付き添いが同行します。最寄りの王国会館の男性から誰かを選ぶことを考えた後で、多くのJWの女性は、感情的・性的満足を求めて外の人を探しますが、このことで非常に大きな罪悪感を抱いてしまいます。このようにして、外の男性との付き合い、罪悪感、外の男性に操られて捨てられるか自分から捨てる、そしてまたその繰り返し、という、悪循環に陥る女性もいます。悲しいことに、このような女性たちは、罪悪感やエホバの証人仲間からの村八分のせいで、ロマンスの喜びを全く経験できなかったのです。
何年も過ぎ去ってしまって、もうやり直すには遅すぎると思っていませんか? 盛りを過ぎてしまったと思っていますか、それとも、もう、自分は男性にとって魅力的でなくなったと思っていますか? 私自身が見てきたところでは、正真正銘よほど醜いのでない限り、恋愛するに足る、よい男性を魅了できないなどということはあり得ません。もし問題があるなら、醜さや大きい鼻やしわやいぼなどは、整形手術で解決できます。自分は太り過ぎだ、と思っているなら、ふくよかな妻(豊かな、美しい女性)を好む男性がたくさんいること、そういう男性の中には、魅力的な人がたくさんいることを知っておいてください。世の中には、よいダイエットプログラムもあります。自分に自信が持てるようになるためにできることがあれば、安全で費用に見合うものであれば、積極的に何でも考えてみてください。ものみの塔のために、残りの人生まで棒に振る必要があるでしょうか???(これまでの何年間かで、もう十分ではありませんか?)
男性は、女性の若さや美人度(外見で見て10点満点だとか)などより、外向的な性格や、ユーモアのセンスなど、人柄に惚れ込むことが多いものです。あなた自身が自分を否定的に見ていると、それは周りにも伝わって、他人もあなたを同じように見るようになります。あなたが自分をもっと肯定的に見始めると、あなたは輝きを増して、人を魅了するようになります。霊性についてのよいセンスや人生の深みを持っている女性は、なおいっそう魅力的なのです!
ものみの塔を離れた女性の多くは、エホバの証人以外の男性と再婚しています。ほとんどの場合、幸福な結婚生活のようですが、夫がなかなかものみの塔での過去の経験を理解できないことも多いようです。夫たちには、そもそもこれほど奇妙なカルトにどうして人がひっかかるのか、非現実的に思えてしまうのです。もし、あなたのご主人も同じ状況でしたら、スティーブン・ハッサンの『マインドコントロールの恐怖』か、私の『エホバの証人のマインドコントロールの理解』をご主人に読んでもらうとよいでしょう。緩慢かつ慎重なカルトの教え込みのプロセスは、非常に巧みなもので、環境が整えば、もっとも知的な人でさえ取り込むことができます。ご主人が教え込みのプロセスをよく理解すれば、あなたとあなたの知性を、今よりずっと尊敬するようになるでしょう。ぜひ、これらの本を、ご主人に読ませてください!