今回の広島会衆の事件によって明らかになった最大の点は、ものみの塔幹部のいやし難い『偽善』とその『組織崇拝』であった。彼らにはイエス・キリストの次の言葉がよく当てはまる。
「彼らのことは放っておきなさい。彼らは盲人を手引きする盲人です。もし、盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むのです。」(マタイ15:14 新改訳)
もはや偽善的な幹部はどうしようもないであろう。彼らのことは、キリストの指示通り放っておくより仕方がない。問題なのは自分たちの案内人が盲目の偽善者であるとは、夢にも思っていない誠実なエホバの証人たちである。純粋に真理を愛し、心から神に仕えているエホバの証人の数は決して少なくない。ものみの塔協会の誤導から解放する必要があるのは、こうしたエホバの証人たちである。
この小冊子の目的は、「誠実なエホバの証人たちにものみの塔協会の真実の姿を伝え、彼らが盲目の案内人の手引きを振り切ることができるよう助ける」ことにある。
ものみの塔協会は強力な情報統制を敷き、一般信者に真実が伝わらないようにしている。もちろんそれは、真の姿が明らかになることによって、組織を離れる人が増えることを懸念しているためである。
一般に出版されているものみの塔を批判する書籍や雑誌を読むことは、サタンの影響を受けることとして禁じられている。組織の中にはそうしたことを話題にするだけでも、背教者の疑いをかけられてしまうような雰囲気がある。信徒のなかには組織の実態に疑問を抱き、誠実に改善を提唱する者もいるが、そのような声をあげようものなら、すぐに背教者、異端者というレッテルをはられてしまう。
この面でのものみの塔協会の行動は非常に素早い。いったん組織から出してしまうと、今度は会衆の羊を守るという名目で、一切の交渉を禁じてしまう。実態を知った者の処分はじつに速やかにかつ徹底して行われるのである。そうなるともはや組織の指示に違反する人が出てこない限り、追放された人が内部の人と話し合うことはできなくなる。
そういうわけで残念ながら、組織の正体を知った人は(私たちもそうであるが)真実を伝えたくても、直接エホバの証人と会って話し合うことができない。ものみの塔協会から神の羊を救い出すには、エホバの証人や彼らと聖書を学ぶ人々を気遣う『善意の人』の協力が是非とも必要になる。この小冊子を読んだ方々が、そのような善意の人になって下されば誠に幸いである。
今まで何冊かエホバの証人救済のための本が発行されてきた。しかしその多くは、残念ながらあまり大きな効果を挙げていない。内部から見ていると、どうもインパクトが弱いというか、最も重要な点が欠けているような印象があった。
それでこの小冊子には、エホバの証人の信仰の最大の基盤となっている点を取り上げてみた。加えて「事件簿」「欠陥翻訳−新世界訳」出版以来、各地から寄せられた情報や意見、提案に基づいて最善と思われる方法を提示した。
効果的か否かはやってみないとわからないが、少なくとも今までよりは何らかの進展を期待できるものと思う。
この小冊子を用い、ごまかしを許さず、ものみの塔協会の実態を問うて行くなら、やがてエホバの証人は次の二つのタイプに分かれてゆくのではないかと考えられる。
(1) のタイプは建設的な批判と単なる悪口の区別の付かない、いわゆるミーハー的信仰の持ち主である。このタイプのエホバの証人には何を言っても無駄であろう。彼らは、若者がアイドル歌手に熱を上げ、みさかいがなくなった状態といっしょで、いかに真実の証拠をあげ論理的に問題点を指摘したところで素直には受け入れない。感情的な反応ないしは冷たい反応にあい、時間が奪われ疲れるだけで何の益も得られず、嫌な思いをすることになる確率が高い。そういうタイプだとわかったら早めに手を引くのが賢明であろう。
このタイプのエホバの証人の親族にはお気の毒としか言いようがない。組織熱が冷めるのをじっと待って出直すか、あるいは親権を利用して強烈な冷水を掛けるかしかないのではなかろうか。
(2) のタイプは単にものみの塔協会に誤導されているだけで、本当の真理、真実がはっきりすれば、人間の作る組織や取り決めを恐れることなく行動できるタイプである。話し合いも実のあるものになると思うので、是非時間をかけて援助していただきたい。
真理の擁護者と組織の奴隷を見分けるのは簡単である。
最後に一言
夢を見ている人は、途中で起こされると不機嫌になるかもしれない。しかし、完全に正気になれば起こしてくれた人に感謝するはずである。